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新潟地方裁判所 昭和24年(行)62号 判決 1949年12月28日

原告

渡邊隆作

被告

木崎村議会

主文

被告が昭和二十四年六月三十日なした被告議会の議員たる原告を除名する旨の決議はこれを取消す。

訴訟費用は被告の負担とする。

事実

原告訴訟代理人は主文と同趣旨の判決を求める旨の申立をなし、その請求の原因としてのべた事実の要旨は被告議会は昭和二十四年六月三十日に開かれた定例会において、原告がさきに昭和二十三年七月十一日開かれた被告の会議の際に同議会の会議規則に違背し且つ議会の体面を汚損する行為をなしたものとして、同会議規則第三十二条第一、二号を適用して被告議会の議員たる原告を除名する旨の決議をなした。併しながら原告はこれよりさき被告議会の昭和二十三年六月二十九日の会議の決議により除名せられたのであつて、原告は新潟地方裁判所に對し右決議取消請求の行政訴訟を提起した結果原告勝訴の判決があり此の判決は昭和二十四年五月二十八日確定し議員たる地位を回復したのであるが、其の間原告は被告議会の議員たる地位を喪失していたのであつて前記昭和二十三年七月十一日の会議の際にいかなる行為があつたとしても議員としての行為と見ることは出来ないのであるから被告が議員の議会内における行動を規律すべき前記会議規則を適用してなした本件除名の決議は違法である、よつてその取消を求めるため本訴に及んだ次第であるというのであつて、原告が昭和二十三年七月十一日開かれた被告議会の会議において被告主張の如き行為をなしたことは否認すると述べ、立証として甲第一、二号証を提出し原告本人尋問の結果を援用し乙号各証の成立を認めた。

被告訴訟代理人は、原告の請求を棄却する、訴訟費用は原告の負担とする、との判決を求め、原告主張事実中、被告が昭和二十四年六月三十日の定例会において原告主張の如き理由により会議規則第三十二条第一、二号を適用して被告議会の議員たる原告を除名する旨の本件決議をなしたこと、原告がこれよりさき昭和二十三年六月二十九日の会議において除名せられ、原告がこれに對し新潟地方裁判所に右決議取消の訴訟を提起し、原告勝訴の判決があつて右判決が原告主張の日に確定したことは何れもこれを認めるがその余の事実は否認する、原告はさきに被告議会の議長であつたのであるが前記の如く昭和二十三年六月二十九日の会議において除名されたに拘らず、同年七月十一日の会議において強いて議長席に着席しようとし、再三制止されたがこれに応じなかつたので副議長竹内彌平次は臨席の警察官に依賴して原告を議長席より退席せしめ、次いで当日の議長補欠選挙に関する議案を上程し書記にその朗読を命じたところ原告はこれを妨げ議長席に在つた議案を記載した書面を破棄して議事の進行を妨害したので被告は原告の右の行動が会議規則第三十二条第一、二号に該当するものとして本件除名の決議をなしたものである。而して原告は前記取消の判決確定によつて議員たる地位を回復したのであるからその後になされた本件議決は何等違法ではないのである。とのべ立証として乙第一、二、三号証を提出し、証人阿部政太の証言及被告代表者竹内彌平次尋問の結果を援用し、甲号証の成立を認めた。

理由

原告は被告議会の議員であつたが、昭和二十三年六月二十九日開かれた被告議会の会議において除名の決議をうけたのでこれを違法として新潟地方裁判所に右決議取消請求の行政訴訟を提起した結果原告勝訴の判決を受け右判決は昭和二十四年五月二十八日確定したこと、其の後被告議会が同年六月三十日開催の定例会議において、原告がさきに昭和二十三年七月十一日開かれた被告の会議の際に同議会の会議規則に違背し且つ議会の体面を汚損する行為をなしたものとして同会議規則第三十二条第一、二号を適用して被告議会の議員たる原告を除名する旨の本件決議をなしたことは当事者間に争がない。而して成立に争のない乙第一号証証人阿部政太の証言及被告代表者竹内彌平次尋問の結果を綜合すれば原告は前記の如く昭和二十三年六月二十九日の会議において除名の決議をうけていたに拘らず被告議会において同年七月十一日議長補欠選挙についての臨時会が開かれた際、強いて議長席に着席し副議長竹内彌平次より再三退席を求められたのであるがこれに応じなかつたのでやむなく同副議長はそのまま開会を宣して書記に議案の朗讀を命じたところ原告は書記より議案を記載した書面を奪つてこれを破棄し議事の進行を妨害したことが認められ右認定に反する原告本人尋問の結果は信用を措くことが出来ない。しかしながら前記の如く原告は昭和二十三年六月二十九日除名の決議をうけその後昭和二十四年五月二十八日右決議取消の判決が確定した結果さかのぼつて被告議会の議員たる地位を回復したのであるが右除名の決議は前記取消の判決が確定するまでは一応効力を有していたのであつて原告は法律上議員として行動することが出来なかつたのであるから右取消判決の確定した以前である昭和二十三年七月十一日の会議において原告が右認定の如き行為をなしても、それは議員としての行為と目することは出来ないのである。さすればこれに対し被告が議場内における議員の行動を規律すべき会議規則第三十二条を適用してなした本件除名の決議は違法であるといはなければならない。よつて本件決議の違法を主張しその取消を求める原告の本訴請求を正当として認容し訴訟費用の負担について民事訴訟法第八十九条を適用して主文の通り判決する。

(裁判長裁判官 山村仁 裁判官 松永信和 裁判官 中村憲一郞)

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